東京高裁平成25年11月1日判決
JASRACの著作権管理事業は、かつて独占業務でしたが、2001年に著作権等管理事業法が施行され、制度上は、そうではなくなりました。
その後、イーライセンスという会社が著作権管理事業の登録をして、事業を開始しましたが、JASRACの牙城がくずれることはありませんでした。
その原因のひとつにJASRACの包括徴収という使用料徴収方式があり、これが、独占禁止法の排除型私的独占に当たるとして、平成21年に公正取引委員会により排除措置命令がなされました。
包括徴収方式とは、使用した楽曲ごとに使用料を個別徴収するのではなく、NHK等の放送事業者の放送事業収入に一定のパーセンテージを乗じて使用料を算定するというものです。
この包括徴収方式が排除型私的独占に当たるとされた理由はこのようなものです。すなわち、放送事業者は、JASRAC以外の管理事業者の管理する楽曲を使用しても、その分JASRACの使用料が減るわけではなく、他の管理事業者に対する使用料の支払いが増加してしまい、余分な支出になってしまうため、JASRACの管理する楽曲以外の楽曲を利用しなくなることで、他の事業者の参入を排除する効果を有する。
これに対し、JASRACが取消しを求めた結果、これを取消すとの審決がなされました。
そして、イーライセンスがさらに取消の取消を請求したのが、この訴訟です。
この裁判の後、独占禁止法の改正がなされたため、現在は制度が変わっていますが、争点は、イーライセンスの原告適格と、本件審決の実質的証拠法則違反の有無でした。
裁判所は、原告適格を認めた上で、JASRACの包括契約方式が、排除型私的独占にいう排除効果を有すると認められると判断し、「取消の取消」を認容しました。
ちなみに、その後、JASRACは使用料の算定方式を変更したそうです。
他方、未だ、著作権管理事業におけるJASRACの一強体制は、あまり変わっていないように見えます。この裁判の原告だったイーライセンスは、その後、ジャパンライツクリアランスと合併して、株式会社NexToneという会社になり、今年(2020年)3月にIPO上場が決まっているそうです。