発起人の権限:
発起人が設立中の会社のためになす可能性のある行為は、以下の4つに分類できる。発起人がこのような行為をする権限を有するか(成立後の会社に帰属するか)が問題となる。
- 設立を直接の目的とする行為
- 設立のために必要な行為
- 財産引受その他開業準備行為
- 事業行為
1.設立を直接の目的とする行為とは、定款の作成、株式の引受や払込、創立総会の招集(65条 1項)などである。発起人がこれらの行為をなしうることに争いはない。
4.事業行為が、発起人の権限に属しないことは争いない。
設立費用
2.にあたる行為とは、会社法 28条 4号の 設立費用 の負担に関する行為である。このうち、定款認証手数料、払込取扱期間に支払う手数料、検査役の報酬、設立投機の登録免許税の支払いについては、会社法 28条 4号・会社法施行規則5条から発起人に権限があることが明らかである。
その他の設立費用、たとえば、設立事務所の賃貸借契約や事務員の雇用などは、定款の記載を要する変態設立事項であるから(28条)、要件を満たせば会社に帰属するが、要件を満たさない場合の効果が問題となる。→ 設立費用 を参照。
開業準備行為
3.については、争いがある。
問題の所在
財産引受に関する会社法の規定は、文言上、開業準備行為のうち、財産取得行為のみを直接の対象としている。しかしながら、発起人が、賃貸借契約等を締結した場合でも、会社財産を不当に減少させる恐れはあるといえる。発起人が行った成立後の会社のための賃貸借契約等の行為が、成立後の会社に帰属するかが問題となる。
A説 発起人は、財産引受以外の開業準備行為をなしうる権限はない(最判昭和33年10月24日)。
B説 設立中の会社は、広く開業準備行為をすることができる必要性があるが、権限濫用防止のため、28条2号が類推適用される。
B説に対しては、定款にどのような定めをする必要があるのか明らかでないこと、検査役の調査等の手続きを要するため、手続きは煩雑となり、実務上も速やかに会社設立をした上で成立後の会社において契約を行えば十分であるから、発起人に開業準備行為をする権限を認める実益はないとの指摘ができる。
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