<判例>無令状のGPS捜査に関する国家賠償法上の責任

東京地裁平成31年4月19日判決

無令状のGPS捜査に関する国家賠償法上の責任が否定された事案です。

GPS捜査が、令状がなければ行うことのできない強制処分に該当することは、最高裁判所平成29年3月15日判決による最高裁判例です。無令状で行われた場合、刑事訴訟法上は違法な捜査となります。国家賠償法上も、この判例が示された後に行われるGPS捜査は、令状がなければ基本的に違法となることとなります。

しかし、東京地裁平成31年4月19日判決の事案は、この最高裁判例の示される前に行われた捜査に関するものでした。

本件に限らず、最高裁判所は、ある法律事項について異なる見解が対立し、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解してこれに立脚して公務を遂行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといって、直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではないとの判断を示しています。

(参考判例)

  1. 不動産として扱うべき立木を動産として強制執行した件に関する最高裁昭和46年6月24日判決
  2. 監獄法施行規則の規程に基づいて未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さなかったことに関する最高裁判所平成3年7月9日判決
  3. 在留資格を有しない外国人は国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当しないとする厚生省通知を発した国の担当者、及び前記厚生省通知に基づき被保険者証を交付しない旨の処分をした横浜市の担当者に、過失はないとした最高裁判所平成16年1月15日判決

本件も、被告は、警察庁内部で「移動追跡装置運用要領の制定について」との要領が存在し、本件GPS捜査も、これに従って行ったものであるとの主張をし、裁判所も、GPS捜査が強制処分に当たらないとする下級審の判断や学説もあり、無令状によるGPS捜査が違法であると認識し得たと言うことはできないとして、請求を棄却しました。