<判例> 9年以上の別居期間がある場合の有責配偶者からの離婚請求が棄却された事例

仙台高裁平成25年12月26日判決

最高裁昭和62年9月2日判決は、有責主義から破綻主義へと判例を変更し、有責配偶者からの離婚請求が認容される場合の要件を示した有名な判例です。
判例の示した要件をおさらいすると、
(1)夫婦の年齢及び同居期間に比べて別居期間が相当の長期であること、
(2)未熟子がいないこと、
(3)相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的にきわめて過酷な状況におかれる等の離婚請求を容認することが社会正義に反するといえる特段の事情がないこと、
というものでした。

この判例は、36年という別居期間があり、最高裁も、同居期間や年齢と対比するまでもなく長期であると評価していました。

この判例後、このような長期間の別居がない場合にも、どの程度の別居期間であれば、離婚請求が認められるかが問題でしたが、その後、最判平成1年9月7日判決が、15年ヶ月の別居期間を「同居期間や年齢と対比するまでもなく相当の長期間が経過している」と判示し、最判平成2年11月8日判決も、23年の同居期間後に8年弱の別居期間があった事例で離婚を認めました(正確には原判決取消で審理を差戻しています)。

このように判例は、昭和62年判決以降、10年に満たない別居期間でも、同居期間よりも短い別居期間でも離婚を認めるのが、現在までの傾向です。

もっとも、これは、未熟子がいないことや、精神的、社会的、経済的に相手方配偶者を過酷な状況にしないこととという、(2)(3)の要件との総合的評価であり、逆にどのような状況にあると、長期の別居があっても離婚が認められないのかが問題となります。

本判例は、同居期間18年に対して、別居期間が9年あまりというもので、前記平成2年判決に比べれば、別居期間がとくに短いわけではなく、子どもも大学生で未熟子とまであいえない状況でしたが、相手方配偶者が、鬱病を患って稼動できておらず、次男の学費のために借り入れた借入金などの負債を抱えていること等の事情を考慮して、信義誠実の原則に反して離婚請求は認められないと判断したのでした。